産後のケアとして知っておきたい妊娠後骨粗鬆症|骨密度検査のすすめ
こんにちは。新宿区市ヶ谷の整形外科 T CLINIC Ichigaya 今回は院長 です。
前回の“整形外科だからできる安心の産後ケア“に続いて、産後の方やこれから出産を迎える方にぜひ知っていただきたい 「妊娠後骨粗鬆症(PLO)」 について整形外科医の立場からお話しします。
「骨粗鬆症=高齢の病気」というイメージが強いかもしれませんが、実は 妊娠や授乳をきっかけに若い女性でも骨密度が大きく低下し、骨粗鬆症になることもあるのです。
妊娠後骨粗鬆症(PLO)とは?
妊娠後骨粗鬆症とは、妊娠中~授乳期にかけて骨密度が急激に低下し、特に背骨(椎体)の骨折を起こす病気 です。
出産後に
- 腰の痛みが続く
- 背中がズキッと痛む
- 抱っこや授乳で痛みが増す
といった症状がある場合、単なる姿勢の問題ではなく骨折が隠れている可能性があります。
いつ発症するの?時期のめやす
発症時期の多くは 出産後数か月以内。
ちょうど抱っこや授乳で腰に負担がかかる時期です。強い痛みや長引く腰の痛みがあるときは 整形外科でレントゲンやMRI検査を受けることが大切 です。
なぜ妊娠後に骨粗鬆症が起きるの?【原因】
妊娠~授乳期は、体の中で次のような変化が起きます。
● 骨密度が自然に低下する
- 分娩直後:破骨細胞(骨を壊す細胞)が活発化
- 授乳期:年間 3〜10% の骨量が低下
→ 実は 閉経後より大きい低下率
● 断乳後は回復するが、追いつかない人も
通常は授乳終了・月経再開とともに回復しますが、回復が間に合わない状態で育児の負荷がかかると骨折につながります。
妊娠後骨粗鬆症になりやすい人【リスク因子】
以下に当てはまる方は特に注意が必要です。
① 家族に骨粗鬆症がいる
骨粗鬆症は遺伝性が高い病気です。
両親や祖父母に
- 骨粗鬆症治療中
- 背骨や脚の付け根の骨折の既往
がある場合、要注意です。
② 低体重(BMI18.5未満)
体重が低いほど骨量も少ない傾向があります。20代女性の約20%が「やせ」で、若い世代の骨量減少が増えています。
③ ビタミンD欠乏の方
日本人の約 98%がビタミンD不足 といわれています。妊娠、授乳中でカルシウム消費も増える中、ビタミンDが不足しているとカルシウムの吸収が低下するため、カルシウム不足にもなります。
妊娠後骨粗鬆症を防ぐには?【予防】
●まずは検査です
自治体で簡易的な検査を受けることもできますが、リスク因子のある方はDXA法による骨密度検査がおすすめです。
リスクの有無にかかわらず、次のポイントを心がけましょう。
● カルシウムをしっかりとる
牛乳、ヨーグルト、小魚、小松菜、豆腐など。
● ビタミンDを補う
鮭、しらす、卵、日光浴(10〜15分程度)。
● 軽めの運動で骨に刺激
散歩、軽い筋トレ、ストレッチなど。骨は歩くことや筋肉を動かすことで刺激され強くなります。
● 無理なダイエットをしない
産後は特に栄養が必要です。体重を減らすことより身体を立て直すことです。
【まとめ】産後に骨密度のチェックを!
産後骨粗鬆症は“稀”ですが、発見が遅れると背骨の変形が残ることがあります。
しかし、早期に見つけて治療すれば骨量は十分に回復可能 です。出産後は赤ちゃんの検診も大切ですがご自身の骨のチェックも忘れずに。
また
- 痛みが長引く
- 抱っこで背中がズキッとする
- ぎっくり腰と思って治らない
こんな症状があれば、放置せず整形外科を受診してください。
当院でできること
当院 T CLINIC Ichigaya では、
- 産後ケアとしての 骨盤底筋リハビリ
- 正確な DXA法による骨密度検査
を行っています。
骨のケアについては10代のうちに、あるいは胎内にいる頃から対策ができるのではと“予防からはじめる“にはきりがないのですが、まずは気づいていただくことからだとおもいます。
骨の健康を守ることは、これから続く育児を支えるあなた自身の体を守ることにつながります。
産後の腰痛や骨密度が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。

